2月下旬~3月上旬

書いただけ書いて投稿してなかったやついまさら供養。

 

日没

前回から引き続き訪れているディストピアものブーム、ただし今作はむちゃ未来のSFチックなものではなくてほぼ現代。舞台が現代だとむちゃくちゃ怖いわ。

ディストピアもの定番の検閲・創作の制限が進んだ世界で、小説家の主人公が読者から過激であると通報されて、総務省の指示で療養所に収容される。療養所では小説を自由に書くことの危険さを指摘されて、書くものの矯正をされ、粗末な食事と監視、罰に怯える日々を送らされる。施設の中むちゃくちゃ怖くてほんとドキドキして面白かった。ほんと怖くて何度か止まったくらい。単に施設に入れられて日常を制限されることも怖いし、それが思想を矯正する内容なのも怖い。月並みだけどこんなことにならないでほしいと心底思う。

 

母という呪縛 娘という牢獄

毒親だった母親を殺してしまった女性の実話。母親も母親で理解できない自己中だったけど、娘も娘で世渡り下手すぎる。どこかで母親を見切って自分本位に生きられれば良かったのに。幼いころからの洗脳みたいなもののせいで仕方がないんだと思うけどあまりに生きるのが下手でかわいそうになった。ほんま苦しいね

 

巴里マカロンの謎 〈小市民〉シリーズ (創元推理文庫)

もう出ないと思ってた小市民シリーズ、タイトルに冬って出ない形でいつの間にやら出てた。10年ぶりのシリーズだったけど変わらず面白かった。昔のイメージより小山内さん可愛い可愛い描写が多かった気がする。萌え豚のため感謝。これからもずっと書いてほしい。

 

ユートロニカのこちら側 (ハヤカワ文庫JA)

こないだ直木賞を受賞した小川哲さんの前の作品。

企業が管理するある都市では、自分が見聞きしたものすべてという究極の個人情報を企業に引き渡す代わりに、労働の必要もない快適な都市生活が手に入る。多くの人がその都市に入るために、求められる人間を演じて生活をする。運よく都市に入り込んだあとも、情報の等級を下げないように、不穏分子と判断されないように、企業に規定された理想的な人間を演じる。その結果都市の運営は大きな問題もなく進む。

現代社会ではここまで明示的に個人の考え方、振る舞いを点数で評価されることはないけど、みんなと同じで良い人間であることを演じさせられることは多いと思う。コロナ関係ひとつとってもマスクをしていないだけで悪い人間だと攻撃される時期があったし。(マスクはするべきだと思うけど)

あと企業が目に見える悪者として、個人情報を収集した先に悪事を働いているというわけでもないのがそれはそれで怖かった。正体のわからぬ巨大組織に対していろいろなものを任せて目先の快適さを享受していることの潜在的な怖さを感じた。

ただそれでもGoogleChromeにパスワードを覚えさせるのはやめられない。俺はもう手遅れなのかもしれない。

 

汚れた手をそこで拭かない (文春e-book)

ミステリ短編集。だけど人が派手に死んだりトリックがむっちゃ凝ってたりのものではなくて、日常にありえそうなシチュエーションで面白かった。未必の故意系のトリックは結構好き(5個ある短編、ぜんぶがそれってわけではないです)

 

はじめてのクラシック音楽 (講談社現代新書)

日本の近代建築ベスト50 (新潮新書)

はえ~こういう世界もあるんか~系新書2冊。蜜蜂と遠雷以降ちょっとだけクラシックに興味でてきてる。コンサートのハードル高いな~と思っちゃうけど一度行ってみると面白そうなので、近場であったら一回試してみたい。

 

地球星人(新潮文庫)

こーれも怖かった。最後怖すぎて声出た。以下引用。

ここは巣の羅列であり、人間を作る工場でもある。私はこの街で、二種類の意味で道具だ。
 一つは、お勉強を頑張って、働く道具になること。
 一つは、女の子を頑張って、この街のための生殖器になること。
 私は多分、どちらの意味でも落ちこぼれなのだと思う。

世の中の働くことと結婚・子育てをすることを推奨するプレッシャーは考えてみれば確かにエグい。考えてみないとそのプレッシャーに気が付かないでいたのも怖い。

別の個体の生殖にやんや言う人間、獣より邪悪かもしれない。

 

少女七竈と七人の可愛そうな大人 (角川文庫)

「砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない」でおなじみ桜庭一樹。砂糖菓子~は高校生くらいのときに読んだけどほとんど内容覚えてない。ただなんとなくじわ~っとしたなって感覚だけあった。これもじわ~っときた。

ちゃんと感想書く技量がないのでひとことで、七竃が可愛いくてちょこちょこ微笑まされる、最後が切ない、おすすめ。(感想短いけどほんとおすすめです)

 

私の男 (文春文庫)

これも桜庭一樹。この本が面白かったですっていうとむちゃくちゃ誤解されそうな一冊だけど、心揺さぶられたしフィクションだと理解してならむちゃくちゃ面白い。作中で起きてる出来事を羅列するだけなら、ただ気持ち悪い、あり得ないって感想になっちゃうだろうけど、小説が上手くて惹きこまれた。美しいと思わされるところ、気持ち悪いと思わされるところ、その重なりが気持ちいい。暗い北海道の冬という舞台と、静かに熱を持つ登場人物の描写も上手かった。映画化もされてるらしいけど映画は多分これを表現しきれていないと思うので、ぜひ原作を読んでほしい。

 

かか (河出文庫)

母と娘の話。「推し、燃ゆ」の人のデビュー作。作者と作品を同一視するのはナンセンスだってわかってるけど、すげえこと考えてるなこの人ってのが最初に思ったこと。男とか女とかで物事とらえるようにしたくないとは思ってるけど、この作品の根底にあった発想は俺にはなかった。自分になかった発想で面白かった。ただ書いてることはものすごいけど、思いもつかない発想に心底共感・理解するって感じになれず、母と娘の関係が上滑りしてしまった。これが実体験だとか感覚でわかる人はもっと心揺さぶられるんだろう。書きたいことを書きたいように書いたこの作品の後に、メッセージもありながら売れそうな推し燃ゆを書いたのはくっそ賢い上手な作家なんだろなと思う。どっかで俺にささる題材で書くときが来そうなので、また読む。

 

以上。